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  • 執筆者の写真: C'ISM BE
    C'ISM BE
  • 2010年3月22日
  • 読了時間: 6分

更新日:11月19日

ベルギービールの世界 No1 :爽やか白ビール


新緑と太陽がまぶしい季節になると、テラスで気持ち良さそうに歓談する人々の間でよく見かける薄黄色い乳濁色のグラス―それが「白ビール」

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日本人が見慣れたラガー・ピルスナー系の透明感ある黄金色と違って、霞がかった乳白色をしていることから、仏語ではBlanche(ブランシュ)、蘭語ではWitbier(ウィットビール)、そして英語ではWhite beer(ホワイトビア)と呼ばれています。


原料は?

ビールの原料の基本は、糖を得るための穀物(通常は麦芽化した大麦)、酵母菌、スパイス(普通はホップ)、それに水。(ちなみに、ドイツや日本では「ビール純粋令」、つまり「麦芽、酵母、ホップ、水以外を使わない」というやり方が神聖化されている。ベルギーの白ビールの特徴は、大麦麦芽に加えてかなり大量の麦芽化させていない小麦を用いることと、スパイスとしてコリアンダーやキュラソー(オレンジの皮ですが、甘みが少なく香料として使われるもの)等を使うこと。乳濁した色は、小麦のたんぱく質と瓶内二次発酵による酵母の澱(オリ)から、爽やかな香りと酸味は独特のスパイス使用から来るものです。


ビール純粋令―1516年バイエルン公国ヴィルヘルム4世により制定されたもの。1871年のドイツ統一時にもバイエルンが統一の前提条件としたため、19世紀以降、ピルスの流行と同時にハーブや他の穀物を利用したビールはドイツから払拭された。EU統一市場になってからは他の加盟国で認められるものは認めざるをえず、非合法化されているものの、今日では、むしろマーケティング上、品質基準として利用されている。


歴史と主要生産地

ベルギー付近の風土は、ぶどうなどの果実や大麦より小麦の耕作に適しており、小麦はパンの原料でもあったため重用され、内陸東南部を中心に積極的に生産され始めたようです。大学の街ルーバンのさらに東南約20kmにあるヒューガルデン周辺では、中世から小麦を主原料のひとつとするビールが造られ、最盛期には100以上の醸造所があったと言われています。ところが20世紀に入りラガー・ピルスナービールが主流となり、大戦中ドイツ軍の侵攻によりベルギー国内の醸造所のほとんどが閉鎖を余儀なくされ、1950年代には最後の醸造所も閉鎖されてしまいました。これをリバイバルさせたのがピエール・セレス氏と銘柄「ヒューガルデン」。醸造所は今日世界最大のビール会社AB Inbev傘下となっていますが、セレス氏は80代半ばにして今も現役。白ビールの父として、ビールファンに敬愛され、新たな白ビールを造って活躍中。醸造所にはヒューガルデンを用いた料理を出す美味しいレストランも併設され、小さなミュージアムもあって、食事を兼ねたドライブにぴったり。


グラスと適温

喉の渇きを癒すゴクゴク系ビールの白ビールは、5℃前後に冷やして飲むことが薦められています。5℃前後で賞味していただくためには、サーバーやビンから注ぐ時の温度はそれよりやや低めが望ましいでしょう。ちなみに白ビールの代名詞「ヒューガルデン」の特徴あるグラスは、手で持ってビールが温まらないよう工夫した結果、分厚いガラス製で六角柱となったとか。


夏といってもそよ風心地よく爽やかなベルギーと、不快指数ガンガンの日本では、適温もおのずと変わってきます。飲み干すと頭がジーンとしびれるほどには冷やさないのがコツ。味や香りは温度で著しく変わりますし、TPO(明るいテラスか暗い室内か、喉を潤おすためか、食中酒かなど)によっても適温はマチマチ。喉越し心地よく、酸味と香りが楽しめる、あなたの適温を見つけてください。


食べ物とのマッチング

強い癖がなく軽い味わいの白ビールは、食べ物との相性もよく、洋食はもちろん、和食、中華など料理のカテゴリーも選びません。料理の研究家やビール専門家達のお薦めのマッチングは、鶏肉、白身魚や甲殻類など。ベルギーの夏を彩る白アスパラなどの爽やかな前菜、あるいはシャーベットなどのデザートにもよく合います。


主なブランド

なんといっても代表格は、「ヒューガルデン」(Hoegaarden)。その他、今日では、多くの醸造所から、様々なブランド名で出ていますが、全国的に配下されているものは少ないので、ベルギー各地を訪れて地元の銘柄を楽しむか、ビール専門カフェ、お土産ビール店で飲み比べしてみましょう。同じ白ビールでも香りや味わいに微妙な違いがあるので、あなたのお気に入りがきっと見つかることでしょう。

Hoegaarden】 (ヒューガルデン)

AB InBev社傘下のDe Kluis 醸造所

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白ビールの代表選手、全国銘柄。ヒューガルデン醸造所では、オリジナルの白ビールの他、新製品フルーツバラエティ(ロゼとシトロン)、Hoegaarden Grand CruやSpécialeを造っていますが、現在ではすべてベネルクスあるいはベルギー限定品のようです。


【Vedett Extra White】 (ヴデット・エキストラ・ホワイト)

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黄金色のビールDuvel(デュベル)で有名な Duvel Moortgat醸造所が、若者向けにポジショニングしなおして成功した銘柄Vedett(ヴデット、『スター』というような意味)の姉妹品として、2008年に新導入。Hoegaardenへの有力対抗馬で、。ベルギー国内のしゃれた若者向けDuvel系列カフェで飲めます。


【Celis White】(セレス・ホワイト) 

白ビール復興の父、ピーター・セレス氏がVan Steenburge醸造所で作るビール。ベルギービールの専門カフェか、お土産ビール店で。(どうやら、ピーター・セレス氏も高齢で大分弱られている模様、心配です。)

その他、白ビールは数多くありますが、流通はかなり局所的とご理解ください。

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著者:栗田路子(くりた みちこ)


神奈川県生まれ。上智大学卒業後、外資系広告代理店勤務。米国コーネル大学およびベルギー・ルーヴァン大学にてMBA(経営学修士)取得。90年代始めから、ベルギービールの日本向け輸出・マーケティングに従事してきたが、2007年4月、セミ・リタイヤ宣言。現在は、寄稿や執筆、日本のメディアのためのリサーチやコーディネートなどを請け負っている。ベルギービールの他、教育、医療、障害児など、守備範囲は広い。 ベルギー在住。2010年にベルギービール騎士の会の「名誉騎士」に任命される。夫とともに㈱マルチライン経営の他、コーディネータースクラブ・ベルギーを運営。障害孤児の養子縁組を支援するチャリティ「ネロとパトラッシュ基金」運営。 障害を持つ子供と供に赴任する日本人駐在員をサポートする「元気ママの会」主催。 今までの寄稿をアップしたブログはこちらから。


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