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No.2 駅前の小さな広場  1963頃 (デルボー美術館蔵)
ポール・デルボー (Paul Delvaux)

これは「駅前の小さな広場」という作品です。

デルボーは1953年から1984年までの31年間、ブラッセルのすぐ南、ワーテルマール・ブワフォーにあるカンパニュル通りに住みました。そのカンパニュル通りの300メートル向こうの突き当たりを横切るように線路が走っています。その家から10分ほど歩くと、この絵のような小さくて美しいワーテルマール駅があります。その駅はデルボーの作品に何度もインスピレーションを与えました。

実際の駅に、このような三角屋根はありませんが、この絵のように2階に三つの窓があって、赤レンガと薄いピンクまたは淡黄色のレンガが織り成す美しい平行線のコンビネーションが特徴です。駅前には、今でも画面上に描かれたような、二本に枝分かれした街灯があります。

寒い冬の夜,駅の裏では、町の家々の窓から明かりが漏れています。暖かい家の中ではお母さんたちが暖かいスープを作って家族の帰りを待っていたことでしょう。そして灯りがともったワーテルマールの駅には、帰りを急ぐ人達が出入りし、お父さんを迎えにきた女の子の姿もあったことでしょう。でも、その人達は現実の世界の住人ではないのです。広場の真ん中にある街灯は、放射線状に魔法の光りを放って、その光りの中で、背中を向けたコート姿の男や、古代ローマの女たち、それに現代風のワンピースを着た後ろ姿の女の子が現れました。夜の駅前広場は、デルボーの夢の世界の住人達が、地域と時代を超越して交差する場所だったのです。


 (絵画はクリックすると拡大します。別ウィンドウで開く場合はここをクリックしてください。)

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森 耕治

著者: 森 耕治 (もり こうじ)
美術史家 ベルギー王立美術館専属公認解説者、ポール・デルボー美術館公認解説者、 京都出身、 5歳のときから油絵を学び、11歳のときより京都の 川端 紘一画伯に師事。水墨画家 篠原貴之とは同門。
ソルボンヌ、ルーブル学院、パリ骨董学院等に学び、2009年よりマグリット美術館のあるベルギー王立美術館に日本人として初の専属解説者として任命され、2010年には、ポール・デルボー美術館からも作品解説者として任命された。フランスとベルギーで年10回に及ぶ講演会をこなす一方、過去に数多くの論文を発表。マグリット、デルボー、ルーベンス、ブリューゲル、アンソール、クノップフ等の研究で、比類なき洞察力を発揮。そのユニークな美術史論と独特な語り口で、雑誌「ゆうゆう」NHKの「迷宮美術館」、今年2月の日経新聞のマグリット特集、ベルギー国営テレビ等マスコミの注目を集める。【お問い合わせ先


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