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No.9 ジュドーニュ国際音楽祭 |
![]() このフェスティバルの開催者は、なんと若手の日本人ピアニスト井上麻衣子さんと、ベルギー人のヨハネス・ビュルコフさん。今回はそんな若いながらにして、音楽フェスティバルを開催を実現した麻衣子さんと、ヨハネスさん、そして運営委員として裏方で支えられた、ゲータンヌ、ジョン=クロード・ドゥ=ブラウェーご夫妻にインタビューしてみました! ![]() 「(井上)麻衣子がピアノを購入したのですが、住んでいるアパートは小さいのでゲータンヌの紹介でジュドーニュのとある家庭に置かせてもらっているのです。場所を見つけたのは、その帰りでした。本当に偶然でした。」 ヨハネスさんがジュドーニュのグランプラスにいると工事中の教会があり、「それでなんとなく入った。」のだそうです。私ならきっと工事現場に何となく入らないだろうなと思うので、これはヨハネスさんが何かに呼ばれたのじゃないかと思ってしまいます。その教会がコンサートホールに改装中の、一年後にジュドーニュ音楽フェスティバルが開かれる第一歩でした。 「これは!と思って直ぐに隣の市庁舎に行き、フェスティバルの事を彼らに提案しました。」というヨハネスさん。実に行動的で尊敬してしまいます。そしてそれから直ぐにゲータンヌさん、ジャン=クロードさんに実行委員として参加してくれるよう救援。「ゲータンヌや、ジャン=クロード、その他のスタッフ達の応援がなければ絶対に実現しなかった」と断言する井上さん。その言葉にはそれだけに感謝で一杯という響きがありました。 一方ゲータンヌさんは「ヨハネスと麻衣子の企画・考案が実にしっかりしていて、だから私達が何かを始めるのではなく、彼らに付いて行けば良いだけでした。彼らのパワーに本当に感銘を受けました。だから喜んで手伝おうと思ったのです。でなければ、こんなに大変なことはお断りしていました」と一笑。「皆で集まることも楽しかったです。皆それぞれ違う分野に知識のある人達で、各自それぞれの専門分野がある。各自が各自を補いました。ヨハネスは営業の才能もありましたよ。」と冗談っぽく話すゲータンヌさんに「僕はチェロが専門ですよ(笑)」と笑顔で返すヨハネスさん。 ![]() そうは言っても、沢山大変な事があったと語る4人。「一番大変だったのは、何か予期してなかった事が起きた時」とヨハネスさん。しかしフェスティバルの間は、準備万端だったので特に予期しないアクシデントはなかったと皆さん口を揃えて仰る。ベルギーでそのような事が可能だとは!本当に準備万端だったのでしょうね。素晴らしい! 一番の不安は会場の工事が進まなかった事。 事業計画あってもなきに等し・・・。 ここはベルギーらしい問題です。しかし幸いにも一週間前に市の企画によるオープニングセレモニーがあったという事で、そこに間に合わせるようになんとか工事は終わってくれたようです。 さて、私の義両親と夫は長年ワーテルローという市でフェスティバルをオーガナイズしています。結局予算がなかったら何も出来ないので、毎年スポンサーがOKを出してくれるかどうかで、心臓をドキドキさせています。そういう心配は?と尋ねてみると、 「特に不況ということもあったり大変でした。営業の経験はないですから、経験を積まないといけないですね。」とヨハネスさん。「今回が初めての企画だったのもあります。皆一体なんなのかということを疑ったりしましたね。」と井上さん。ただ今年のフェスティバルはとても良い感じに進んだので、これが口伝いにそういうのが伝わってより一層素晴らしいフェスティバルになっていって欲しいと、力強く語られていました。 なんと言っても一番苦労するのは聴衆を集める事。今は家で、インターネットで何でも出来てしまうような時代。エンターテイメントも数知れず。本当にお客様に足を運んで頂くという事ほど難しい事はないのです。 私も常々痛感です。 沢山の人に手伝ってもらい、スタンダードな形で沢山宣伝したという皆さん。しかし、最も最大の宣伝は「ジュドーニュのフェスティバルがあるよ!」という口コミ。やはり第一回目、まだまだ新しい物ということで、フェスティバル・ジュドーニュは知られていません。そんな中、中々知らない物のために足を運んで下さるお客さんは少ないというもの。もっと早くから宣伝した方が良いなどの反省点もあるようです。 そんな中、ここにもベルギーらしい難関があったようです。ジュドーニュという街は、オランダ語圏とフランス語圏の境界線にあり、隣町はオランダ語圏。しかしオランダ語圏にはフランス語のポスターを貼る事を禁止されているのだとか(2カ国語ならOK)ヨハネスさんはオランダ語圏出身でありながらこの厳しさ。しかし私が日本語のポスターを貼るのは大丈夫なのではないかという事です。フランス語に対して厳しいのでしょうね。 そんな色々苦労して準備をしたフェスティバルですが、最も楽しかったのは「フェスティバル当日!」と言い切る麻衣子さん。「皆が、このフェスティバルのために集まって、それを見ているのが本当に楽しかった。当日は演奏があり裏のことにまでは手が回らなかったのですが、裏方スタッフさんが完璧に準備してくれていました。準備されたワインを手にしながら、レセプションの蝋燭を見た時は本当に全てが綺麗だと思いました。」と目を輝かせていました。主催者ならではの感慨深いものがあったに違いありません。 既に次回の準備は昨年末から始まっているという事。次回の目標は「ホールを満員にすること」。色んなアイデアを出し合って、現在相談中。小さい点で色々変えて行く事はあるものの、大きな点では変えることはなく、とにかく第二回に向けて前進中の4人でした! まだ次回の宣伝等は始まっていませんが、皆さんもどこかでポスターをご覧になったら、是非若き音楽家の熱き思いを思って応援してあげて下さいね! 次回のフェスティバル予定は2012年の10月18日から21日です。ジュドーニュ音楽フェスティバル公式HP: http://www.fimj.be/ ![]()
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神田望美 (かんだ のぞみ):ベルギーを中心に演奏活動を繰り広げているフルーティスト。
日本、西欧諸国、ノルウェー、チュニジアの音楽祭、コンサートにも出演し、各国の新聞にて好評を得る。
Estampes(フルート・ヴィオラ・ハープ)、東京ブリュッセルトリオ、フルートアンサンブル4tempiのメンバーとして活躍し、室内楽を主に多くの音楽家と活動する。故西沢幸彦氏の影響を強く受け、新境地の開拓を目指し、邦楽器、語り、日本の音楽をプログラムに取り入れるなどの試みをしている。ブリュッセル王立音楽院フルート科教職課程を修了し、ベルギー公立のアカデミーの代理講師、Dinant International summer academieにて指導。Atelier de Fluteを立ち上げ指導を行う。日本でもセミナーや吹奏楽部指導などを定期的に行っている。これまでに高橋あかね、植村泰一、西沢幸彦、マルク・グローウェルス氏に師事、ヴァンサン・リュカ、ヴァンサン・コルトブリントらのセミナーに参加。 フェリス女学院大学音楽学部、王立モンス音楽院卒。公式HP![]() ![]() |
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