No.14 パイプオルガン #2 |
オルガン特集の第2回は、旧市街にあるステンドグラスの素敵な教会、サブロン教会のオルガンです。 今回は、私の音楽院時代からの友人で、現在フォレ区のサン・ドニ教会専属オルガニスト、また、ベルギーを始め各地でコンサートもされている樋笠理絵子さんにオルガンの仕組みについてお尋ねしました。今回も映像付きでお届けします! 前回の記事でもご紹介しました通り、パイプオルガンには沢山のパイプがあり、オルガンの裏側に”ふいご”と呼ばれる空気を送るシステムがついています。パイプは1つの鍵盤につき1本のパイプではなくて、1つの鍵盤に、音色を選ぶためのストップと呼ばれる、鍵盤の横に付いている木の棒の様なスイッチの数の分だけパイプが付いています。 サブロン教会のオルガンは、3段鍵盤。一段につき58鍵盤あるので、58鍵盤×3段×音色ストップの数となります。それで1000本以上のパイプになってしまいます。音の調律は、パイプをひとつひとつ丁寧に合わせていくので大変時間がかかる大作業。 「ふいご装置をオンにすれば、パイプの中に空気が流れますので、音は出る準備が出来ていますが、ストップを引っ張って弁を開けない以上、鍵盤を押しても音は出ないのも特徴です。中々日本の方には馴染みがない楽器なので、皆さんにご紹介出来る機会があると、とても嬉しく思います!」と樋笠さん。確かに、ヨーロッパを代表するこの楽器はあまりに大きくて、中々気軽に買えるものでもなく、お家に置けるものでもない?? さて今回は、クラシック音楽愛好家でずっとオルガンに憧れていたという、ブリュッセル在住(2017年夏まで)のTさんが挑戦しました。初めて触れる本物のパイプオルガンにドキドキのTさん。オルガンの説明を一通り聞き「オルガンの仕組みは分かれば分かるほど面白い。試せるのが楽しみです!」と、興奮気味に語ります。 それではまずオルガンの基本的な説明をご覧ください。なんとオルガンは座り方から注意しなくてはならないようです! 「パイプオルガンとピアノの違うところは、一つの鍵盤でいくつもの音色を重ねることが出来ることです。なので料理と同じような感じで、もう少しパンチが欲しいな、もう少し甘くしたいなと思ったら、ストップを調整して音の重ね方を変えるのです。」と樋笠さん。なるほど、料理と一緒とはとても分かりやすい説明です。お料理のように音色を作っていく作業は、想像するととても楽しそう。他にもストップにはヴィブラート(音の振動)をかける仕組みもあるようです。 しかしながら、人間の手は2本だけ。鍵盤が3段あっても全部は一緒に弾けないし、どうやって音を重ねるのだろうと疑問に思いませんか?前回のジョナタンさんの演奏動画をご覧頂いてもお気づきになるかと思いますが、パイプオルガンは押されていない鍵盤が一緒に動いていることが多いのです。鍵盤には沢山の仕掛けが隠されていそうです。そんな鍵盤の仕組みについて、樋笠さんが説明してくれています。 さて、樋笠さんの説明を聞いていると、何度も『空気』という言葉を聞きます。空気を感じるということが、やはり音楽を作る上で大事なのでしょうか?鍵盤のタッチにも大きく影響しそうです。 「オルガンは『空気』が通ることで音がなるので、鍵盤を押している間はずっと音が鳴り続ける、そして外したらすぐに音が消えます(教会の残響は残りますが)。その辺が同じ鍵盤楽器でも、鍵盤を押すとハンマーが弦を叩くことで音が鳴り、その残響分だけしか音が続かないピアノとは大きく違います。空気が流れてるところに鍵盤を押して音を出すわけですから、鍵盤数が増えればそのぶん重くなり、最初からしっかりと弾かないと変な風に音が出て行ってしまいます。だから音の最初と音の終わりにはとても気を使います。」と樋笠さん。なんだか分かるような分からないような??そこでTさんに、悪い例と良い例を試してもらいました。 なるほど、ヘニョーと始まってしまうと、とても格好悪いですね(笑)あの壮厳な演奏の裏には沢山の技術と心配りがあるようです。 「オルガニストが大変なのは、自分で聞こえている音と、教会の下(オルガンは教会の上にあることが多いので)で聞こえる音の感じがまるで違うということですね。コンサートの時は遠征でも必ず前もって当日のオルガンで練習させてもらい、教会が大きくなると違いも大きくなります。なのでそこはとても気を使いますね。」とのこと。以前、サント・カテリーヌ教会のオルガンコンサートで、樋笠さんと歌の方とのコンサートの際には、(歌とオルガンの音量の)バランスを下(観客席)から聴くためのお手伝いに行ったこともあります。楽器が違うと、想像も付かない気遣いがあると思わされました。 では最後に樋笠さんに、皆さんも(多分)ご存知の、とても教会らしい曲を弾いてもらいました! 結婚式でお馴染みの曲です。ぜひお聴きください♪
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神田望美(フルート・篠笛奏者) ベルギーを中心に演奏活動を行い、日本、西欧諸国、ノルウェー、チュニジアなどで音楽祭、コンサートに出演。 故西沢幸彦氏の影響を強く受け、新境地の開拓を目指し、邦楽器、語り、日本の音楽をプログラムに取り入れるなどの試みをしている。室内楽・現代音楽・邦人作曲家の作品、現代邦楽、ワールドミュージックなどで活動中。ベルギー始め、ノルウェー・ルクセンブルグ、チュニジア、ドイツ、日本等の新聞、ラジオなどで紹介される。Atelier de Fluteを立ち上げ、ブリュッセルとパリにて教室を主宰。その他毎夏International Music Academy Dinantで講師を務める。公式HP。Facebook Twitter ブログも絶賛更新中! |