【2013-11-10】 「ベルギーがオランダに領土の一部を譲渡!?」
11月7日付の La libre Belgique紙は、ベルギーが近々、国土のうち14ヘクタールほどをオランダに譲ることになると伝えました。14ヘクタールといえば東京ドーム3つ分に当たる広さですが、これをオランダに譲るとは一体どういうことでしょうか。
譲渡の対象になっているのは、ベルギー東部のヴィゼ(Visé)市とオランダのアイスデン(Eijsden)市の間をまたがる国境沿いの地域です。低木や薮が生え、水鳥が生息する美しい自然保護区となっています。両国間にはムーズ川が流れており、1843年、川の中点に沿って両国の国境が制定されました。
しかし、20世紀に入り、運河の建設や護岸整備などがなされたことにより、川の流域は大きく変わりました。かつては深くカーブしながら流れていたムーズ川は、より直線的な流れとなったのです。したがって、国境線は陸地を通ることとなり、カーブの分だけベルギーの領土がムーズ川の対岸にはみ出す形になっているのです。これではオランダに一度踏み入れなければ向こう岸のベルギー領土に入ることが出来ず、警察の取り締まりなどにも不便が生じています。
この事態を改善するため、2年ほど前より、ヴィゼ市とアイスデン市の両市長や地籍の専門家などによる検討会がたびたび持たれ、今年3月に、領土譲渡についての合意に至ったということです。近々、ベルギー、オランダ両政府・議会の審議にかけられ、可決されれば、国境の再制定となる見通しです。
国境再制定の話は、1960-80年代の護岸整備直後にも一度持ち上がりました。しかし、シェンゲン協定もまだなく、人やものの流れが今のように自由でなかった当時、国境を動かすことへの反発も大きく、協議は失敗に終わりました。
ヴィゼの市長は、「今日我々は自由に国境を越えてこの地域を散歩できる。地形に従い川のこちら側がベルギー、あちら側がオランダとするのが合理的だ」と言い切ります。ヨーロッパ域内の移動の自由が担保されて久しい今日だからこそ、このような合理的な考えで領土交渉が前進するということなのでしょうか。ちなみに、オランダからは引き換えに、ムーズ川の左岸にはみ出た若干の土地がベルギーに譲渡される見込みです。
まだ国レベルでの審議が残されてはいますが、実現すれば、画期的な領土のやり取りになるのではないかと注目されます。
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