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 N0.11  川瀬まり(臨床心理士・性セラピスト)   【2017-4-6】 
今回の「ベルギーのプロに聞く」は、2015年より臨床心理士(Psychologue Clinicienne)として活躍されている川瀬まりさんにお話を伺いました。主に、駐在の日本人や国際カップルを対象とした「相談室」をメディカルセンターで開室しています。今年の1月からは、新たに取得した性セラピスト(Sexologue Clinicienne)としての活動も始められ、より包括的な視点で個人個人が抱える問題の解決に取り組んでいます。

【川瀬まり Mari KAWASE】
日本で心理学の学士を取得。ベルギーの(UCL)ルーヴァン・カトリック大学にて心理学の修士号を取得。2015年よりブリュッセルのメディカルセンターで臨床心理士として「相談室」を開始。性科学(Sexologie)の学位を取得し、2017年より開業。現在、フランス人の夫とベルギーに在住。

相談室のHP http://www.solvoa.com/
メディカルセンターのHP http://www.medicis.be/fr/consultations-medicales-et-para-medicales/equipe-medicale/kawase.html    



スタッフAw(以下、Aw):川瀬さん(以下、敬称略)は、日本でいうところの心理療法士として診療をされているということですが、どのようなお仕事でしょうか。


川瀬:2015年より臨床心理士としてメディカルセンター内に相談室を設けました。日本人の心理士としてインターナショナルスクールのチームと一緒に働くなど相談室以外の仕事もしていますが、心理士として関わる方は、やはり日本人が多いです。

「相談室」という名前には私なりの思いがあります。ここに住んでいる日本人の方は、みなさん、外国で生活をすることで大なり小なりストレスを抱えています。そういう方が、ちょっと相談をしたいな、話を聞いてもらいたいな、と言うときの「第一窓口」になりたいと思っています。

環境の変化への戸惑い、辛さ。愚痴を言う場所でもいい。あるいは、ライフ・コーチングのように、自分の人生を見つめ直すきっかけにもなるような場でもいい。「相談室」があることで、せっかく来たこのベルギーでの生活をより充実したものにできた、そんな場にしたいという思いを込めて「相談室」と名付けています。

Aw:海外に暮らす日本人にとっては、とても心強いですね。どういった悩みのご相談がありますか?

川瀬:例えば、ベルギーに転勤してきたら、同じ会社の仕事であってもこれまでと同じようにいかない、思うようにならない、というストレスを抱えることは不思議ではありません。あるいは駐在の奥様が、昔からのお友達のように話せる相手がいないのに、ご主人も不在がちで辛い思いをしている。日本であれば家族や友達がいて、多少辛いことも紛れる機会がありますが、外国では小さなことが積み重なって大きな負担になることもあり得ます。

これまで相談を続けてきて実感するのは、「辛い」ということは分かっているけれど「我慢」する、というケースが多いことです。それで解決するなら良いのですが、解決しにくいことが多いのです。
ですので、「辛いな」と感じたら、まずは「自分を見つめる時間」を持ってほしい。そして、我慢せずに話をしてほしい。限界がくる前に、「辛いな、しんどいな」という気持ちに気づいたら話してほしいです。

臨床心理士の仕事には、病気に対するケアだけではなく、「予防」という役割もあります。昔から、この「予防」の部分に興味があったのですが、こうして診療を続けてみても、辛くなってしまってから治すのではなく、その前の段階で対処することが大切なのではないか、と考えています。

相談のプロセスは、本当に千差万別です。例えば、問題の核心に近づけば近づくほど、不安や怖さを感じて中断してしまう相談者さんも多いのですが、一度間隔を置いてから来られる方も何人もいらっしゃいます。ある相談者さんは、半年ほど間を置いて相談を再開したのですが、半年間の間に何かが違っていました。ご本人が問題に向き合う覚悟ができたのだと思います。その後は表情も明るくなり、だんだん生き生きとしていくのが感じられて、とても嬉しかったです。もちろんこれからもいろいろな壁に突き当たることがあると思いますが、最終的には自分の癖や、困った時自分はどう対応するのがよいか、を確認して終了しました。

Aw:臨床心理士のお仕事が、ベルギーと日本で異なる部分はありますか?

川瀬: ベルギーでは、日本よりも心理士を訪れることに抵抗がないようです。お医者さんが患者さんに「心理士に会いに行った方が良い」という提案をすることも多々あります。
臨床心理士は、1993年から国家資格として認められています。2016年からは profession de santé(健康に関する専門職)としても正式に認められました。 お医者さんや歯医者さんのように、自動的に保険の払い戻しが効くようになる日を待ち望んでいます。

また、実際に働く上では、「お医者さんと対等に話ができる」、「お医者さんが心理士に任せてくれる」、という信頼感があります。これは、心理士に限ったことではなく、ベルギーの医療現場全般に言えることかもしれません。看護師さんも他の医学療法士も、それぞれが専門家として問題に取り組むので、そこには上下関係はありません。チーム医療では、皆が自分の専門分野に対して自信を持って堂々と意見を言いますし、仕事に対するスタンスが違うなと感じさせられます。

Aw:今年の1月からは、性セラピストとしての診療も始められたそうですが、こちらについてもお聞かせください。

川瀬:まだ始めたばかりですが、心理士としての活動に加え、性セラピストとして性に関するカウンセリングやセラピーも相談室で行っています。 性科学に興味を持ったのは、心理士の仕事に役立つと考えたためです。個人の心理的問題も、よくよく話を聞いてみると、夫婦問題が隠れていることが多いのです。たとえそれが主たる問題ではなくても、夫婦の関係がうまくいと、個人の問題にも対処しやすくなります。そうした経験から、この分野のことを自信をもって考えられるようになりたい、と思いました。

性科学が学問として成立したのは、カナダのケベックでした。そこで研究していた人々がUCLで活動を始めたのが1970年代です。それ以降かなり時間はたっていますが、性的なことを相談しにくいというのはベルギーも同じです。 例えば、身体的な問題だけではなく、性的開花をどのように理解し、覚えるのか。実は、そうした場はポルノ雑誌か、あるいは論文に限られていて、一般の人は知るすべがない。
そのため、専門家が集まってAAAh…という協会を設立したのが2年前です。私もこの協会の設立メンバーに加えていただいています。妊娠の仕組みだけではなく、性的開花の問題についてもちゃんとした教育・情報を得られるようにすることが大切だという考えから、様々な活動を行っています。

ベルギー以上に性に対する恥ずかしさがある中で、日本のみなさんにも「性」を「恥ずかしいもの」ではなく、「人生の充実に大切なこと」であると伝えていきたいです。セックスレスの問題など、性生活が夫婦関係に悪影響を及ぼしている、というのは珍しくありません。そうした場合も、ただ二人の関係性というだけではなく、個人の心理的な問題、身体的な問題をサポートしていきます。相談しにくい部分ではありますが、特殊な性癖など、たいていのことでは動じませんので、ぜひ相談にいらしてください。

Aw:今後の抱負等をお聞かせください。

川瀬:性セラピストとしては、1月に始めたばかりですので、まだまだこれからです。みなさん来にくいだろうな、ということは想像がつきますので、こんな相談もできる、ということをみなさんに知っていただきたいです。また、(将来は)日本の性科学の専門家とも、ぜひ一緒に活動していきたいと思っています。

心理的問題にしても、性の問題にしても、ミラクルはないので、1回で簡単に終わることはまれです。個々の原因、理由によって対処法はたくさんありますし、性の問題であっても確立したプログラムがありますので、ぜひ試していただきたいです。

 

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